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『鬼才 福沢桃介の生涯』
浅利佳一郎 著
NHK出版
ある問題でちょっと気になったことがあったので経緯を調べていたら
福沢桃介という名前が出てきた。
で、桃介については福沢諭吉の養子ということしか知らなくて
ちょっと読んでみた。
浅利さんは桃介の側から書いているので割り引いて読んだほうがいいとは思うのだが、桃介はまあとても魅力的な人物である。
言っちゃあ悪いが、田舎で立身出世を夢見る心優しい青年がひょんなことから運をつかんで、
明治の名だたる人の中で青年の個人的純情さで苦悩したり挫折したり
とても天下・国家・企業をまかせるに値しない甘ちゃんだったり
突然目の付け所が国家百年の計になったり
とにかく振幅が激しいのだ。
言動と行動と回顧、他人からの評価が一貫性がなく巨人と呼ばれるようなあくの強さもない。
才能も運もあるのに、人に嫌われないよう(特に諭吉に対して)に細心の努力を払って、やりたいことが全部中途半端になってしまうのだ。
諭吉が死んだ後、桃介は誰に遠慮することなく相場に没頭し、金の亡者のごとき買占め乗っ取りを始めていくのである。
浅利氏は桃介夜話から引用した上でこう書いている。
”桃介はリストラをきっぱりと否定したのだ”(本書13ページ)
”桃介の経営哲学の基本は安い給料でも一生懸命に働く正直者の社員がいてこそ、その会社は発展し続けるのであって、高給をとるごますり社員は何人いても一つとして会社の役には立たないという理論だ”(本書14ページ)
ね、桃介ってこれだけでもどんな人か知りたくなるでしょ。
日本の電力王と呼ばれた『鬼才 福沢桃介の生涯』、面白い本でした。
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