2009-03-16
漱石全集の中で第十三巻が好きです。
これには漱石の日記の下書きや創作のためのメモなんかを集めたもの。
手帳の片隅に英語や漢詩のほかにこんなことが書かれています。
”猫の読心術”
”馬の言葉がわかったらよかろう”
どんなことを考えていたんだろうね。
そう思うとなんだか、あの大文豪がすごく身近に感じるんです。
わたしは安田侃さんの大理石の彫刻が好きです。
森の中にひっそりとおいてあるような石に触ると
地球のやさしさに満ちた鼓動を身近に感じます。
安田侃は石が持っているやさしさをわたしのために取り出したのでしょう。
石が持っている生命の力強さを、病気にくじけそうな老婦人のために取り出したのでしょう。
あなたの作品は写真でしか見たことがありません。
でもあなたが彫り出した”それ”を触ると、百人が百人の別々な優しさを取り出すのでしょう。
だから、写真からでもわたしへの、そしていろんな人へのやさしさがにじみでていると思っています。
日々のメモや断片は、ごく普通の取るに足らないものでも、
時代があなたの力を借りて、この時代が必要としているものを創りだそうとしています。
どうぞ心から楽しんで毎日をお過ごしください。
ロンドンのまだ見ぬ友人へ
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